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福岡地方裁判所大牟田支部 昭和61年(ワ)60号 判決

主文

1  被告らは原告に対し別紙物件目録記載の土地につき福岡法務局大牟田出張所昭和三五年一一月一一日受付第六四一五号をもってなされた所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続をせよ。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

一  申立

原告は主文同旨の判決を求め、

被告らは「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

二  原告の主張

別紙物件目録記載の土地は小田惣次郎の所有に属していたが、同人は昭和三五年一一月一〇日同土地につき入江佐一との間に売買予約をし、福岡法務局大牟田出張所昭和三五年一一月一一日受付第六四一五号をもって入江佐一のために所有権移転請求権保全仮登記を経由した。

小田惣次郎は昭和四一年一〇月二五日死亡し、小田繁雄が相続により小田惣次郎の権利義務を承継し同土地の所有権も取得した。小田繁雄は昭和五八年一月一〇日死亡し、小田民子、小田和代、小田幸二、小田繁智、小田京子、小田秀幸が同土地の所有権を相続により取得した。

原告は小田繁雄との間に締結した昭和五五年六月二六日付抵当権設定契約に基づき、同土地につき福岡法務局大牟田出張所昭和六一年四月一七日受付第四四六四号をもって別紙抵当権目録記載の抵当権を有するところ、同抵当権の債務者である株式会社住全(代表者坂田剛毅)が被担保債権の弁済をなさないので、原告は当裁判所昭和六一年(ケ)第二八号競売事件により同土地の競売を申立て昭和六一年六月六日競売開始決定がなされ係属中である。

本件土地の地目は田であり、前記仮登記は昭和三五年一一月一〇日売買予約を原因とするもので、その権利の行使につき始期又は停止条件も付されていない。従って本件仮登記は右予約成立の日から起算して満一〇年を経過した昭和四五年一一月一〇日には時効により消滅している。

入江佐一は本件仮登記の抹消登記義務を履行しないまま昭和五〇年七月二八日死亡し、被告らが相続によりその権利義務を承継した。

原告は前記競売事件の差押債権者であるが、同事件は時効消滅し抹消されないまま残存している本件仮登記の存在によって著しくその進行を妨害されている。原告は抵当権者であり、登記上の利害関係人であって、右仮登記により甚大な損害を受けているので本訴において右時効を援用する。

原告は自己の債権、抵当権を保全するため、本件土地の所有者・抵当権設定者の小田民子外五名に代位して、債権者代位権に基づき右時効を援用する。

よって原告は被告らに対し本件仮登記の抹消登記手続をすることを求める。

三  被告らの主張

原告主張の事実中、別紙物件目録記載の土地が小田惣次郎の所有に属していたこと、同人が昭和三五年一一月一〇日同土地につき入江佐一との間に売買予約をし原告主張の仮登記を経由したこと、小田惣次郎が昭和四一年一〇月二五日に死亡し小田繁雄が相続によりその権利義務を承継し同土地の所有権を取得したこと、小田繁雄が昭和五八年一月一〇日死亡し小田民子、小田和代、小田幸二、小田繁智、小田京子、小田秀幸が相続によりその権利義務を承継し、同土地の所有権を取得したこと、入江佐一が昭和五〇年七月二八日死亡し、被告らが相続によりその権利義務を承継したことは認め、その余の点は争う。

株式会社住全が本件土地を含む周辺土地を買受けて宅地分譲する計画があり、実質的所有者である猿渡傳吉と同会社との間で同土地の買収計画が行われたが同会社が買収を断念したので結局同土地の売買は不成立に終った。

原告は同会社が本件土地につき買収予定であり売買契約が締結されていないのに形式的所有者である小田繁雄との間で抵当権設定契約を締結し、同会社に四七五〇万円を貸付けたものであり、本件仮登記は右抵当権に優先する。

四  証拠(省略)

(福岡地方裁判所大牟田支部)

別紙

物件目録

福岡県大牟田市船津町三三七番の一二

田 三三〇m2

抵当権目録

原因 昭和五五年六月二六日金銭消費貸借の同日設定

債権額 四七五〇万円

利息 年九・五%

損害金 年一八・二五%

債務者 大牟田市岩本二六九三番地の七 株式会社住全

抵当権者 熊本市大江本町一番六号 熊本中央信用金庫

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